売上はあるのにお金が残らない?小さな事業が毎月見るべき3つの数字
「売上はそれなりにあるのに、なぜか通帳のお金が増えていかない」 「会計ソフトでは黒字なのに、月末になると支払いが心配になる」
個人事業主や小さな事業を営む方から、よく聞くお悩みです。クラウド会計やPOSレジを入れて、数字の入力や記録はきちんとしている。それでも、お金が残らない理由がはっきりしない――そんな状態の方に向けて書きました。
結論:「利益」と「お金」は別物。3つの数字を毎月見れば原因が見えてくる
最初に結論をお伝えします。
会計上の「利益」と、手元に残る「お金(現金・預金)」は、同じではありません。
利益は「売上から費用を引いた計算上の数字」です。一方、手元のお金は「実際に入ってきたお金と出ていったお金の差」です。この2つは、タイミングや中身のちがいによって、毎月ずれていきます。
そのずれの原因をつかむために、毎月見てほしい数字は次の3つです。
- 粗利(あらり)と粗利率
- 固定費
- 手元のお金の増減(と、利益との差)
難しい分析は必要ありません。この3つを毎月同じ形で並べて見るだけで、「どこでお金が止まっているのか」が少しずつ見えてきます。
なぜ売上があってもお金が残らないのか?よくある5つの理由
まずは、お金が残らない主な理由を見ていきましょう。ひとつだけでなく、いくつかが重なっていることも多いです。
1. 仕入れたお金が「在庫」になって眠っている
商品を仕入れると、その時点でお金は出ていきます。ところが会計上は、売れるまでは「在庫(まだ売れていない商品)」として扱われ、費用にはなりません。
つまり、仕入れを増やすと、利益は変わらないのに、手元のお金だけが減ることが起きます。売れ残りが増えるほど、お金が棚の上で眠っている状態になります。
2. 値付けが低く、粗利が薄い
粗利とは、売上から、その商品をつくる・仕入れるのにかかった費用(原価)を引いた残りのことです。「売上総利益」とも呼ばれます。
たとえば(架空の例です)、1,000円で売る商品の仕入れが800円なら、粗利は200円です。売上が伸びても、1つあたりの粗利が薄ければ、家賃や人件費などを払ったあとに残るお金はわずかです。「忙しいのに残らない」と感じるときは、値付けと原価のバランスを確かめる必要があります。
3. 固定費がじわじわ増えている
固定費とは、売上が多くても少なくても、毎月ほぼ同じように出ていく費用のことです。家賃、人件費、通信費、ソフトの月額利用料、リース料などが代表的です。
ひとつひとつは小さな金額でも、「便利そうだから」と契約したサービスが積み重なると、気づかないうちに毎月の負担が増えていきます。固定費は一度増えると減らしにくいため、早めに気づくことが大切です。
4. 借入の返済や税金の支払いなど、利益と関係なくお金が出ていく
借入金の返済(元本の部分)は、会計上は費用になりません。そのため、利益には表れないのに、お金は確実に出ていきます。「黒字なのにお金が足りない」原因として、よくあるもののひとつです。
また、税金や社会保険料は、利益が出た時期と実際に支払う時期がずれることがあります。支払いの月にまとまったお金が出ていくため、その月だけ手元のお金が大きく減ることがあります。
なお、具体的な税額や支払いの時期、申告については、顧問の税理士にご相談ください。ここで大切なのは、「利益とは関係なく、まとまって出ていくお金がある」と知っておくことです。
5. 売上の入金が遅い(売掛金)
売掛金とは、商品やサービスはすでに提供したけれど、まだ代金を受け取っていないお金のことです。請求書払い・月末締め翌月末払いのような取引や、カード決済・キャッシュレス決済の入金待ちなども、これにあたります。
会計上は、提供した時点で売上になります。しかし、お金が入るのは1〜2か月後ということもあります。その間にも仕入れや家賃の支払いは先に来るため、売上は立っているのに、手元のお金が足りない状態になりやすいのです。
毎月見るべき3つの数字
ここからは、5つの理由をまとめてつかむための「3つの数字」を紹介します。
数字1:粗利と粗利率 ― 「稼ぐ力」が落ちていないか
粗利は前の章で説明したとおり、売上から原価を引いた残りです。粗利率は、売上のうち粗利が何%にあたるかを表したものです。
- 粗利 = 売上 − 原価
- 粗利率 = 粗利 ÷ 売上
たとえば(架空の例です)、売上100万円・原価60万円なら、粗利は40万円、粗利率は40%です。
売上だけを見ていると、「先月より売れた」で終わってしまいます。粗利率もあわせて見ると、「売上は増えたけれど、値引きが多くて粗利率が下がった」といった変化に気づけます。理由2(値付け)の確認に役立ちます。
数字2:固定費 ― 「毎月の出ていく土台」が増えていないか
固定費は、合計額を毎月同じ表に並べて見ます。できれば、家賃・人件費・通信費・サブスク(月額サービス)など、いくつかの項目に分けておくと変化に気づきやすくなります。
ポイントは、粗利と固定費を並べて見ることです。粗利から固定費を引いた残りが、おおまかな「本業で残る利益」になります。粗利が増えても、それ以上に固定費が増えていれば、残るものは減ってしまいます。理由3(固定費)の確認に役立ちます。
数字3:手元のお金の増減 ― 利益との差を見る
最後は、月初と月末の預金・現金の残高を比べた「手元のお金の増減」です。通帳や会計ソフトの残高を見れば分かります。
大切なのは、この増減をその月の利益と並べて見ることです。
| 項目(架空の例) | 金額 |
|---|---|
| その月の利益 | +10万円 |
| 手元のお金の増減 | −5万円 |
| 差 | 15万円 |
この例では、利益は出ているのに、お金は5万円減っています。この「15万円の差」がどこから来たのかを考えます。
- 在庫が増えていないか(理由1)
- 借入の返済や、税金などまとまった支払いがなかったか(理由4)
- 売掛金(まだ入金されていない売上)が増えていないか(理由5)
差の理由が分かれば、「お金が残らない」というモヤモヤが、具体的な確認ポイントに変わります。
数字をどう見ればいい?「月次数字 → 差異確認 → 次の行動」の型
3つの数字を集めたら、次の3ステップで見ていきます。
ステップ1:月次数字 ― 同じ項目を、同じ表にまとめる
粗利・粗利率・固定費・手元のお金の増減(と利益)を、月ごとに横に並べた表を1枚つくります。エクセルやスプレッドシートで十分です。
ステップ2:差異確認 ― 「どこが、なぜ」ずれたのかを確かめる
差異とは、比べた数字との「ずれ」のことです。前月、前年同月、または立てた計画と比べて、大きく動いた数字を探します。そして、「なぜ動いたのか」を考えます。金額の大きさより、理由を言葉にすることが大切です。
ステップ3:次の行動 ― 来月やることを1〜3個に絞る
理由が見えたら、来月やることを決めます。たとえば「売れ残りが多い商品の仕入れを控える」「使っていない月額サービスを見直す」「入金の遅い取引先への請求のタイミングを確認する」などです。
やることは1〜3個に絞るのがコツです。そして翌月、同じ表で結果を振り返ります。このくり返しが、数字を「記録」から「判断の材料」に変えていきます。
支援の現場で感じること:数字は「ない」のではなく「整理されていない」
小さな事業の数字の整理をお手伝いしていて多いのは、数字がないことではありません。 クラウド会計やPOSには、すでにたくさんのデータがたまっています。
足りていないのは、それらの数字が整理されておらず、判断に必要な情報が見える化されていないことです。売上はPOS、経費は会計ソフト、残高は通帳……と、数字があちこちに散らばったままで、並べて比べる形になっていないケースがよくあります。
そしてもうひとつ感じるのは、毎月同じ項目を継続して見るだけでも、気づきがあるということです。特別な分析や難しい指標を使わなくても、同じ表で比べ続けることで、「この月だけ固定費が増えている」「売上の割にお金が減っている」といった変化が自然と目に入ってきます。
最初から完璧な表をつくる必要はありません。続けられる形で、同じ項目を見続けることのほうが大事です。
まとめ:まずは3つの数字を、毎月同じ形で見ることから
売上はあるのにお金が残らないときは、「利益」と「お金」が別物であることを思い出してください。そのうえで、次の3つを毎月見ていきましょう。
- 粗利と粗利率:稼ぐ力が落ちていないか
- 固定費:毎月出ていく土台が増えていないか
- 手元のお金の増減(利益との差):在庫・返済・売掛金などでお金が止まっていないか
そして、「月次数字 → 差異確認 → 次の行動」の型で、毎月少しずつ振り返ります。同じ表で比べ続けることが、お金が残らない原因に気づくいちばんの近道です。
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